Godox IT30Proは「小さくて持ち運びやすく、でもちゃんと使える」ポータブルストロボです。
TTLやHSS、USB‑C充電、Xシステムのコマンダー機能といった必要十分な機能をコンパクトな本体に詰め込みつつ、実戦で使える実用性を両立しています。
この記事では公式スペックとコスプレ撮影で使用した実運用の感触を整理し、購入前に知っておくべきメリットと注意点をわかりやすくまとめます。
Godox IT30Proってどんなストロボ?
長所と短所
Godox IT30Proの長所と短所を最初にまとめておきます。
長所
- 携帯性が高い:小型軽量で持ち運びとセットが速い。
- 操作が直感的:TTL/マニュアル切替やグループ制御が簡単。
- 低〜中出力で安定:色温度のぶれが少なく再現性が良い。
短所
- 最高出力は控えめ:大光量が必要なシーンには向かない。
- バッテリー持続に課題:長時間運用や高速連射で厳しい場合がある。
- リサイクルタイム:高頻度発光で遅延を感じることがある。
公称スペック(主要数値)
公称スペックとしてはガイドナンバー、調光範囲(1/1〜1/128)、最大HSS速度、充電時間、フル出力での発光回数目安などがあります。
チャネルだけでなくID指定もできるので混線には強いですね。
項目 | メーカー公称値(公式) |
---|---|
製品名 | Godox iT30Pro |
対応マウント/対応カメラ | Canon / Nikon / Sony / Fujifilm / Olympus / Panasonic(モデル別に対応) |
ガイドナンバー(GN) | 約 GN15(ISO100, 1m 表示) |
調光範囲 | 1/1 〜 1/128(1/3段ステップ) |
発光モード | TTL / Manual / Multi(マルチ) |
最大HSS速度 | 最大 1/8000 秒(機種やカメラにより差あり) |
グループ/チャンネル数(送信/受信) | グループ:送信時 A,B,C(コマンダー); 受信時 A,B,C,D; チャンネル 1–32; ID OFF/01–99 |
ヘッド可動/固定 | 固定式(角度可変なし) |
内蔵ディフューザー | あり(本体横の物理レバーで展開/収納) |
調光ステップ/精度 | 1/3段ステップ |
発光回数(フル出力)/リサイクルタイム | フル出力約 560 回(公称); リサイクルタイム 公称約 1.5 秒(条件による) |
電源/充電方式 | 内蔵リチウム電池 7.4V / 900mAh、USB-C 充電対応 |
サイズ(外形)と重量 | 約 65 × 46 × 47 mm;重量 約 120 g |
付属品 | USB-C 充電ケーブル、収納ポーチ、マニュアル |
ワイヤレス通信方式/通信距離 | Godox 2.4GHz X システム対応;通信距離 公称約 100 m |
チャンク機能(同期・連写) | マルチ(フラッシュ連写)対応(公称:最大 100 回、100Hz) |
発売時期 / 備考 | メーカー公称スペックは公式説明書参照、機種ごとのファーム差やカメラ依存あり |
サイズと重さ
Godox IT30Proは手のひらに収まる小さなボディで、約120gと軽量です。(V860IIIは410gほど)
バッテリーは内蔵式で交換や取り外しはできません。
カメラに直付けしても負担になりにくく、街撮りや旅行、スナップ撮影に気軽に持ち出せます。
バッグの隙間に入れておけば、急な撮影にもさっと対応できます。
主な機能とモード
TTL、ハイスピードシンク(HSS)、S1/S2トリガーモード、タッチ操作、USB-C充電などの基本機能を備えています。
前の機種であるGodoxIT20とは違いXシステムに対応しているのでトリガー機能やレシーバ発光もできる優れもの
TTLは自動で露出を合わせてくれるため初心者にも扱いやすく、タッチ操作は現場での設定変更をスムーズにしてくれます。
付属品とパッケージ内容
パッケージには充電ケーブルや簡易ケース、説明書などが同梱されています。
ストロボがコンパクトなのでいままでのストロボと比較してあまりに小さな箱で驚きますね。
必要に応じて外付けディフューザーやソフトボックスなど別売アクセサリーを用意すると運用が広がります。
対応カメラメーカー
2025年10月現在は主要メーカー(Canon、Nikon、Sony、Fujifilm、オリンパス)に対応していますが、
マウントやファームウェアの違いで挙動が変わることがあります。
購入前に自分のカメラとの互換性、特にTTLやHSSの挙動について確認しておくとトラブルを避けられます。
おまけ;Pentaxのカメラで動作するのか?
Godox IT30ProにはPentax用は今のところありません。
そこで実際にK-1のホットシューに取り付けてシャッター切ってみたが反応せず。
マニュアル発光での設定でも使えないようです。
しかしPentax用のGodox X2Tの上のホットシューに取り付けた状態でストロボをマニュアル発光の設定にするとK-1のシャッターのタイミングでストロボが光りました。
接点の違いによるものかもしれないがこれでオンカメラのフィルライトとしても使えないこともない。(この使い方するならIT20でも良いわけですが・・・・)
Godox IT30Proを使ってみて感じたこと
小さいのにちゃんと光る
小型のストロボなので大光量は期待できませんが、室内や近距離での補助光やアクセント光としては十分に機能します。
光量としてGodoxのストロボの16分の1の光量がIT30Proのフル発光と同じです。
部屋自体は暗めの場所であればそれなりに全身撮影でも対応できます。
光量被写体に近づけて使うと効果的で、通常の室内光で使用する場合はメイン光源として使うには物足りない可能性もありますね。
ISO感度をあげつつ適切なバランスを取る必要がありますね。
リサイクルタイムを計ってみた
正確な数値を図るのでは難しいのであくまで時計も見ながら発光ボタンを押して測ってみた感じにはります、
フル発光:1.5~3秒
16分の1 :0.2秒程度
フル発光では最初の数回は1.5秒程度で発光できるがだんだん遅くなっていき3秒程度待たされるようになる。
電力の蓄積が間に合わなくなっていくんでしょうね。
上位の大きなストロボと比較すると内蔵バッテリーのわりに意外とリサイクルタイムが長めに感じますね。
操作がかんたん
タッチパネルとダイヤルで直感的に設定ができます。
タッチ操作の感度も悪くないしスムーズ。液晶の短押し、長押しを使うので最初は戸惑うかも。
メニューを出して上にスクロールさせるとストロボモードの選択できるボタンがあるのが最初気が付かなかった。
TTLやHSSの切替も迷わず行え、撮影テンポを崩さない操作性は現場で助かります。
本体のボタンにダイヤルでも操作を行うことができます。
充電と連続使用感
USB-Cで充電できるのでモバイルバッテリーからの補給が可能で、外撮影で便利です。
ただし小型ゆえにフル出力時の発光回数やリサイクルタイムは限定的になります。
長時間の連続撮影や高速連写が多い場面では予備機や補助電源の用意をおすすめします。
他のストロボと組みあわせる場合はIT30Proは強めの発光になるので電源にが注意ですね。
Godox IT30Proの光の調整とディフューザーの効果
1/1〜1/128までの調光でできること
光量は1/1から1/128まで細かく調整できます。
光量の最大はGN15なので結構弱く発光させることができます。
強めのアクセントから控えめな補助光まで作れるため、物撮りや背景光、リムライトの調整に向いています。
光量を絞るとリサイクルも速くなるため、連写での運用もしやすくなります。
内蔵ディフューザーの切替方法と効果
内蔵ディフューザーは本体横の物理レバーで展開・収納を切り替えます。
写真1枚目がディフューザーなし。2枚目がディフューザーありです。通常のストロボに付属していた拡散版のようなものが付いているのが見えますね。
展開すると光が広がる印象になりますが、発光面そのものは小さいままなので柔らかさの改善は限定的。
直当ての硬さを「少し和らげる」程度の効果で、光源自体が小さいの個人的には差がほとんどわからないです。
拡散性を高めたいときの外付け案内
より柔らかい光を求める場合は、小型ソフトボックスやディフューザーパネル、リフレクターの併用を検討してください。
ただし外付けを使うと光量は落ちますので、被写体との距離や出力を調整する必要があります。
携行性とのバランスを考えて選ぶのがポイントですね。
Godox IT30Proはコマンダーとしても使える
カメラに付けて他のストロボを操作できる
IT30ProはXシステムのコマンダー機能を持ち、カメラに装着したまま他のGodoxストロボを制御できます。
手軽に多灯ライティングを試したいときや、機材を少なくまとめたいときに便利です。
ただし後述するグループ数の制限には注意が必要です。
光りながら送信もできる点の利便性
IT30Proは自ら発光しつつトリガー信号を送れるため、トリガー兼発光源として二役をこなせます。
写真のように内蔵ストロボとその下に各グループの光量を設定可能です。
小物撮りやアクセント入れのような場面で特に重宝します。
専用トリガーを持たない方には大きなメリットですね。
専用トリガーを持っていない人へのメリット
XProやX3などの専用コマンダーを別に用意しなくても、IT30Proだけである程度の多灯運用が可能です。
旅行や外撮影で荷物を減らしたい方や、まずは多灯を試してみたい入門者に向いています。
グループの設定数が少ないので複雑な多灯構成を想定する場合はXPろやX3といった専用コマンダーの併用を検討してください。
Godox IT30Proのグループ制限に注意しよう
トリガー機能はA〜Cの3グループのみ
Godox IT30Proをコマンダーとして使うと選べるグループはA・B・Cの3つだけです。
いままでのコマンダーのXproやX3で5グループを細かく使う運用が一般的な現場では、この制限がネックになることがあります。
特にコスプレ撮影のように背景、リム、アクセントなどを細かく分けたいケースでは注意が必要です。
例えば、Aにメインの光源。Bにリムライト、Cにフィルライトと使うと背景にあてるストロボに割り当てができなくなってしまうという感じですね。
フィルライトIT30Pro本体のストロボに任せてCを背景用ライトに回すといった回避策も考えたほうがいいですね。
レシーバー時はA〜Dの4グループまで Eは非対応
レシーバーとしてはA〜Dまで対応しますが、Eグループは指定できません。
既にEを割り当てている構成に混ぜると意図したとおりに動作しないため、グループ設計を見直すか専用コマンダーを併用する必要があります。
多灯運用の対策案
対策としては、XProやX3などの専用トリガーを併用して5グループを確保するのが分かりやすく確実な方法です。
あるいはIT30Proは補助光専用にして、メインのグループ管理は専用トリガーに任せる運用も実用的です。
具体的な機材組合せ例や現場での割当例を提示すると読者に親切です。
Godox IT30Proを使うときの注意点と対策
レンズの影が写り込むことがある
IT30Proをホットシュー直付けや低い位置で使うと、広角や大口径レンズでレンズ先端の影が写り込むことがあります。
特にレンズフードや大きめのレンズを使うと顕著になるため、撮影前に必ずテスト撮影を行っておくことをおすすめします。
GODOX TTLホットシューライザーで高さを確保する方法
Godoxのホットシューライザーを使うとストロボの位置を数センチ上げられ、レンズ影を回避しやすくなります。
TTL通信を保持するタイプを選べば自動露出機能もそのまま使えます。
小型で軽いライザーは携帯性にも優れるため、常備しておくと安心です。
発光方向や角度を変えられない点(ヘッド固定)
Godox IT30Proはヘッドが固定式で角度調整や天井バウンスができません。
バウンス主体のライティングを多用する方には不向きです。
角度を変えられない分、外付けリフレクターや別機種の併用、配置での工夫が必要になります。
Godox IT30Proはどんな場面で使える?
街歩きや旅行のスナップ
軽さとコンパクトさを活かして、小型カメラでの自然なスナップ撮影に向いています。
目立たずに補助光を入れられるので、日常の瞬間をきれいに切り取りたいときに便利です。
逆光の補助光やポートレートのアクセント光
メイン光を他に用意し影の明るさを調整することで逆光の補正や顔の立体感出しに使うと効果的です。
メイン光を別に用意し、IT30Proはリムや目のキャッチライトなどのアクセントに回すのがおすすめです。
室内での物撮りや商品撮影の補助光
小物や商品の部分的なハイライト、質感出しに向いています。
ディフューザーを使って直当ての硬さを少し和らげつつ、細やかな光量調整で質感表現がしやすいのが利点です。
Godox IT30Proと他のストロボの違い
GN60クラスとの比較
GN60クラスの大光量ストロボと比べるとIT30Proは光量が劣ります。
Godoxの一般的なストロボであるTT600やV860などはほぼGN60でIT30ProはGN15。
数値的には4分の1ですが光量としては16分の1になります。
普段からストロボで1/16以下の設定をしている場合は明るさの想像がつくかと思います。
携行性や気軽さではIT30Proが優れています。
用途を明確にして、メイン光源は大光量機、補助や携帯用はIT30Proといった使い分けが現実的です。
通常のストロボとの使い分け
一般的なGodoxのストロボであるTT600やV860系は可動ヘッドや大きな発光面でバウンスやメイン光に向いています。
コスプレ撮影ではIT30Proはメインストロボの作った影を明るくするといった補助光として使うのがよさそう。
なにしろ小型なのでカバンの中でスペースを使わず携帯用として活かすのが効率的だなと感じています。
なんなら複数持っていても良いくらい。
撮影スタイルに合わせてどれをメインにするか決めると良いです。
専用トリガー(XPro/X3)と組み合わせた運用がお勧め
専用トリガーを併用するとグループ数や細かな制御が可能になり、多灯構成の自由度が増します。
例えばIT30Proを補助光に限定し、XPro/X3で主制御を行うセットはコスプレやスタジオワークで実用的です。
わたしは専用トリガーであるXproでIP30Proを制御することが多くなりそうな気がしますね。
上記の写真のように安物のプラスチック製自由雲台にホットシューアダプターを付けつつ、土台を磁石やクランプに変更することでいろんな場所に設置できるようにして使用しています。
Godox IT30Proレビューまとめ
メリット
- 非常にコンパクトで軽量(約120g)、街撮りや旅行で持ち出しやすい。
- TTL/HSS対応や1/1〜1/128の細かい調光幅で実用性が高い。
- カメラ装着のまま他ストロボを制御できるコマンダー機能が便利。
- USB‑C充電対応で外撮影での運用がしやすい。
注意点
- ヘッドが固定式でバウンスや角度調整ができないため、光の方向を工夫する必要がある。
- 内蔵ディフューザーは効果が限定的で、本格的な柔らかい光には外付けアクセサリーが必要。
- コマンダー利用時はグループがA〜Cの3グループのみ、受信はA〜D(E非対応)で多灯運用に制約がある。
- 小型ゆえにフル出力時の発光回数やリサイクル性能は大型機に劣るので、長時間連写では予備機や補助電源を準備することを推奨。
軽さと機能のバランスを重視するスナップ、旅行、入門者の補助光用途には非常に向いています。
一方でバウンス主体のライティングや大規模な多灯制御を主目的にする場合は、可動ヘッドや多グループ対応の上位機種のストロボや専用トリガーとの併用を検討してください。